Arduino MKR ZEROボードはArduino UNOと同程度の価格なのに、
ROMやRAM、動作クロックなどはArduino UNOよりもかなり高スペックになっているボードです。(しかも小さい)
Arduino公式ページ:
個人的には良いマイコンボードだと思うのですが、Arduino UNOなどと比べるとサードパーティ製のシールド基板はあまり見かけません。
(Arduino公式のMKR ZERO用シールドについては、最近、秋月電子さんで購入できるようになってますね)
なので、今回はArduino MKR ZERO用のPoE機能付きEthernetシールド基板を作ってみようかと思います。
基板の概要
Ethernet通信機能に関しては、ArduinoではおなじみのW5500の通信ICを使用します。さらにLANケーブルで電源供給が可能になるPoE機能を搭載した基板にしようと考えています。
基板サイズはできる限りArduino MKR ZEROと同じくらいのサイズにしたいです。
Arduino MKR ZEROボードの電源入力はDC5Vなので、PoE電源で5V電源を生成してMKR ZEROに電源供給するような構成にします。
PoEについて
ひとくちにPoEと言っても、PoEに関する規格がいくつかあります。- IEEE802.3af: 最大12.95W(受電機器側の最大電力)
- IEEE802.3at: 最大25.5W(受電機器側の最大電力)
IEEE802.3atは「PoE+」という通称で呼ばれることもあります。
他にも、IEEE802.3btというさらに大電力(最大70Wくらい?)の電力供給ができるようになる新しい規格もあります。
さらに上記のPoE規格において、「電力クラス」という区分が規定されており、クラスごとに供給可能な電力が規定されています 。
クラス0: 0.44〜12.95W
クラス1: 0.44〜3.84W
クラス2: 3.84〜6.49W
クラス3: 6.49〜12.95W
クラス4: 12.95〜25.5W(PoE+対応機器のみ)
例として、
「クラス1」の受電機器の場合 、最大3.84Wまで電力供給されますが、もし消費電力が3.84Wよりも大きくなったときは給電側の機器が異常と判断して給電を停止されます。
(この辺りの詳細動作は給電側機器の仕様にもよると思いますが。)
使用する機器の消費電力に合わせて適切な「電力クラス」を指定することで、異常検知や必要以上の電力を供給しないようにするなどの電力制御が可能になります。
給電側の機器はどうやって「電力クラス」を識別しているのか?
給電側と受電側で特に通信をしているわけではないのですが、給電機器と受電機器がLANケーブルで接続された時に- 受電側の機器がPoE対応機器かどうかのチェック
- 受電側の機器がどの電力クラスかのチェック
PoE対応機器かどうかのチェック
受電側機器にはPoE対応機器である事を示す識別用抵抗(約25kΩ)が内蔵されており、給電側機器がPoEの電源供給ラインに一定電圧を印加して、この抵抗値を検出することでPoE対応機器が接続されていると判断します。LANケーブルを接続した時に識別用抵抗が検出できない場合は給電側機器は給電を行いません。
どの電力クラスかのチェック
PoE電源供給ラインに一定電圧を印加した時に流れる電流値によって電力クラスを判別しています。受電側機器はこのチェック動作時に設定した電力クラスに対応した電流値が流れるように制御されます。
PoE電源制御ICは各半導体メーカー(TIやリニアテクノロジーなど)から色々出ています。
こうしたPoE電源制御ICを使用すれば、この辺りの制御はICが勝手にやってくれます。
今回のPoE電源概要
PoEの給電側機器から給電される電圧はDC44〜57Vであるため、そのままArduino MKR ZEROボードへ電源入力するわけにはいかないので、スイッチング電源回路などを設けて降圧する必要があります。降圧する方法はスイッチング方式やシリーズレギュレータのような方法もありますが、シリーズレギュレータで約50V→5Vに降圧するのは電力損失が多くなりすぎて現実的ではないため、ここではスイッチング電源回路を設けることにします。
スイッチング電源にも絶縁型や非絶縁型とありますが、今回は絶縁型のスイッチング電源にします。
Arduino MKR ZEROボードへの供給電流はひとまず1Aくらいであれば十分と考えて、最大1Aとします。(供給電力:5V x 1A = 最大5W)
- スイッチング電源回路: PoE供給電源(DC44〜57V)→ DC5V に降圧
- Arduino MKR ZEROへの供給電源: DC5V
- 供給電力(供給電流): 最大5W(最大1A)
次回は具体的な使用部品や回路などを考えていくことにします。
次 > (2)主要部品の決定