KiCadで基板を作る

オープンソースの回路CAD「KiCad」を利用した回路設計や基板製作などを紹介します。


【プロフィール】
iw回路設計
KiCadで回路設計や基板設計をしたりしています。 https://iw-circuitdesign.net

前回はざっくりと仕様を決めたので、この仕様をもとに回路図を作っていきたいと思います。
  1. 電源基板の入力は5V(ACアダプターから給電)とする
  2. 出力電圧は 3.3V、1.8V、1.0V、1.5V、1.35V、1.2V の6系統出力とする
  3. 電源シーケンサーICを使用して、順番に立ち上がるようにする
  4. POK信号(パワーグッド信号)とLEDを使用して、正しく電源出力をしているか確認できるインジケータを設ける
  5. 電源スイッチと電源LEDを設ける
  6. 基板は2層または4層、100mm x 100mm以下でなるべく小さくなるようにする

主要部品

  • DC/DCコンバータ EN5322(メーカー:Intel)
  • 電源シーケンサーIC LM3880(メーカー:TI)
    →各電源を順番に立ち上げるために使用します
  • リセットIC  TL7705A(メーカー:TI)
    →電源スイッチによるON/OFFで使用します
  • バッファIC    CD74HC4050  (メーカー:TI)
    →インジケータ用LEDを駆動するために使用します

プロジェクトファイル作成

まずはKiCadのプロジェクトマネージャの画面からプロジェクトファイルを作成します。
  • 「ファイル」→「新規」→「プロジェクト」
  • 適当な保存場所とプロジェクトファイル名を指定して、プロジェクトファイルを作成
project_manager
今回は「FPGA_power_supply」というプロジェクト名にしました。 

回路図シンボルの用意

基本的にデフォルトで用意されている回路図シンボルが使用できる場合は積極的に使っていきます。
が、今回使用するEN5322などの独自のピン配置のICなどはやはり自分でシンボルを作る必要があります。 

ということで下記シンボルは自分で作りました。
・DC/DCコンバータ EN5322
EN5322_symbol

・電源シーケンサーIC LM3880 
LM3880_symbol

・リセットIC  TL7705A
TL7705A_symbol

・バッファIC   CD74HC4050
CD74HC4050_symbol

EN5322の設定電圧

EN5322は3つの設定ピン(VS0、VS1、VS2)の状態によって出力電圧を8通りに変えることができます。
EN5322_VIDsetting
                 ※EN5322のデータシートより

今回必要な電源電圧は 3.3V、1.8V、1.0V、1.5V、1.35V、1.2V  なので、
・3.3V、1.8V、1.5V、1.2Vは設定ピンを上記の表に合わせて設定するだけでOKです(外部抵抗は不要)
・1.0Vと1.35Vは設定ピンを全て1(Hレベル)に設定した上で、外部抵抗を用いて任意の出力電圧を設定にする形になります

各電源の入力コンデンサ、出力コンデンサについて

EN5322データシートより、入力および出力コンデンサは下記のものが推奨と記載されていますので、ここは深く考えずに推奨値のものを使うことにします。
  • 電源入力(PVIN端子)の入力コンデンサ:10uF/10V
  • アナログ電源入力(AVIN端子)の入力コンデンサ:1uF/10V
  • 出力コンデンサ:47uF/6.3V  または 22uF/6.3 x 2個(22uF x 2個の方が出力リプルを低減できるようです)
EN5322_capacitor


EN5322のEN信号

いわゆるイネーブル信号で、この信号によって通常動作/シャットダウンの動作切り替えを制御することができます。
  • Hレベル入力時:通常動作
  • Lレベル入力時:シャットダウン

このEN信号と電源シーケンサーICを使って、各電源を規定の順番で立ち上げるようにします。

EN5322のPOK信号

EN5322には出力電圧が正しく出力しているかどうか確認できるPOK信号(オープンドレイン出力)があります。
オープンドレイン出力なので、10k~100kΩ程度の抵抗でプルアップして使用します。
  • 出力電圧が設定値の92~111%以内の時:Hレベル(内部の出力FETはオフ)
  • 上記以外の時:Lレベル(内部の出力FETはオン)
このPOK信号とバッファICを利用して、正しく出力しているときにLEDを点灯させるようにします。


EN5233の周辺回路図

以上の内容から、各電源のEN5322周辺回路は下記のような回路にしました。

・3.3V電源
3V3_schematic

・1.8V電源
1V8_schematic

・1.0V電源
1V0_schematic

・1.5V電源
1V5_schematic

・1.35V電源
1V35_schematic

・1.2V電源
1V2_schematic

次 > EN5322を使用した実験用電源基板の設計(3)〜回路図作成〜
前 >  EN5322を使用した実験用電源基板の設計(1)~仕様決め~


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